研究概要 |
窒化クロムは(CrN)は耐摩耗性膜として適用されており,耐酸化性・耐食性に優れていることが知られている。近年,CrNを改良した(Cr,Al)Nはの微細構造と機械的性質に関する研究が数多く報告されているが,機械加工分野において汎用的に用いられている(TiAl)Nに比べ,(Cr,Al)Nの耐熱性と耐酸化性は劣るといった問題が残されている.そこで,ドライ切削への適用を見据え,本研究では,(Cr,Al)Nの熱安定性の改良を目的として,希土類元素と珪素を添加した薄膜を作製し,熱安定性を中心とした膜特性を評価した.得られた結論を以下示す. (1)希土類元素とシリコンの配合を変化させることにより,900℃までNaCl型を維持し,1000℃において部分的にウルツ鉱と変態した.また,膜の機械的性質の評価として,微小硬度を評価したところ,熱処理後の時効効果より28GPaの硬度値が得られた.したがって,適用範囲は限られるが,切削工具や摺動部材への被覆材としての有用性を見出すことができた. (2)次年度の計画に先駆けて,耐酸化試験を評価したが,成膜後に形成されるマクロパーティクルを起点として酸化が進行し,大気高温環境においてクラックが発生することが問題となっている.今後の課題として,膜の平滑性の改善により耐酸化性の向上を図る必要がある.
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