研究概要 |
(研究目的) 自動車車体などの軽量化,高剛性化を実現するための構造を採用する手法として,重ね継手部の溶接にレーザの適用が近年検討きれている.一般に,溶接継手の静的な性能は「継手の引張強度」を「母材の引張強さ」で割った「継手効率」で評価されている.継手効率=100%を保証するために必要以上の接合面積を得ようとすると,大入熱,低速溶接,もしくは溶接ビードが複数本必要となるなど省エネルギー化,高生産効率の観点からは逆行してしまう.そこで,継手効率=100%を保証しつつ,より小さい接合部面積を実現できる溶接接合条件を提案し,その有効性を示すことを研究目的とした. (得られた成果) 板厚および引張強さの異なる高張力薄鋼板(HT590,HT980)を用いて,ビード形状が1本の直線の場合,2本の平行ビードおよび円弧で波線状にレーザ溶接した重ね継手を作成し,引張せん断試験を行い,継手強度と溶接ビード形状および破断部の相関関係を調べたところ,以下の知見が得られた. 1)ビード形状が2本の平行ビードおよび円弧で波線状の場合,狭いビード幅でも継手効率100%となる継手となった. 2)円弧ビードの場合は2本平行ビード形状と比べても,比較的短い溶接時間で,継手効率100%となる継手を得られるなど,強度と生産性に優れた溶接ビード形状であることを示した. 3)高張力鋼HT980の場合,HAZ部で軟化が起こり,引張試験を行うと母材の引張強さより低い強度でHAZ部で破断した.これは鋼の強化方法に起因するものであり,継手強度が溶接ビード形状によらず,軟化域の硬さに依存することを確認した.
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