研究概要 |
(研究目的)一般に, 溶接継手の静的な性能は「継手の引張強度」を「母材の引張強さ」で割った「継手効率」で評価されている. 継手効率二100%を保証しつつ, より小さい接合部面積を実現できる溶接接合条件を提案し, その有効性を示すことを研究目的とした. (得られた成果)平成19年度に実験で検討したビード形状が1本ないし2本の直線ビード形状の重ね継手, および鋸歯ビード形状, 円弧ビード形状の重ね継手試験片について, 有限要素法(FEM)で相当塑性ひずみ値およびJ積分値を計算した. これらの値を用いて, 実験で得られた重ね継手の静的引張せん断試験における継手強度を予測したところ, 以下の知見が得られた. 1)直線ビード重ね継手の継手強度については相当塑性ひずみおよびJ積分値を用いて評価できたが, 鋸歯, 円弧ビード形状重ね継手については推定誤差が大きい結果となった. 2)全てのビード形状の試験片を統一した強度評価方法で整理することはできなかったが, 解析結果から推定した継手強度の大小と実験で得られた継手強度の大小関係は一致しており, 定性的には相当塑性ひずみを用いて重ね継手の継手強度を説明できた. また, 重ね継手引張せん断荷重だけでなく, はく離荷重が作用した場合の重ね継手強度についても議論する必要があると考え, 十字引張試験により検討したところ, ビード形状を環状に溶接した重ね継手の十字引張試験において, 低荷重で界面破断することなく, 十分な継手強度を有してプラグ破断するために必要な接合部外直径および接合部幅の具備すべき条件を明らかにした。
|