超音波加振下における鋳型内表面では、金属溶湯と鋳型の"みかけの濡れ性"が向上し、鋳型内面形状の鋳物表面への精密な転写に大いに寄与することが期待される。超音波振動の印加が、どのようなメカニズムで転写性向上に寄与するのかを明らかにすることとが本研究の目的である。音響キャビテーションの発生下における金属溶湯の充填、凝固挙動について評価した平成19年度の研究に引き続いて、平成20年度は、液体の充填性向上(≒音響毛管現象)メカニズムの解明を目指した。キャビテーションの発生を制御するために雰囲気圧力が調整可能な実験系を構築した。音響毛管現象が発現している時の毛管内の圧力変動を測定するために高い時間分解能を持つ圧力センサを、毛管開口部におけるキャビエーションの形成挙動を観察するために高速度カメラを導入した。 音響キャビテーション(数十k Hzの超音波振動による)を伴う音響毛管現象が発現中の細管内圧力変動の周期については、音源からの基本周波数成分に加えて、その2倍の周波数(第2高調波)成分が占めることが観測された。その際の音圧振幅は、キャビテーションが発生していない場合のそれを越えることはなかった。音響キャビテーション気泡が存在する液体中を音圧変動が伝播する過程において非線形性が強く現れた結果と言える。音響毛管圧力の発現を説明付ける簡素化した力学モデルを提案するに至った。本年度の研究成果については、現在、国際学術雑誌への投稿準備を進めている。
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