研究概要 |
本研究では,金属複酸化物系ガス分離膜の動力学的組織変化を定量的に予測することで,現実の使用条件をパラメーターとして,酸素分離膜中の組織変化を系統的にまとめる。また,添加するドーパントの最適化をはかり,長時間の使用に耐えうる金属複酸化物系ガス分離膜の設計指針を提案することを目的としている。今年度は,金属複酸化物系酸素分離膜のモデル系として,ペロプスガイド系金属複酸化物(SrC_oO_<3-δ>)を選択し,分離膜中の酸素ポテンシャル分布を計算するために必要な電気伝導度と構成イオンの拡散係数に関するデータを収集した。その結果,SrC_oO_<3-δ>については,電気伝導度と酸化物イオンの拡散係数に関する報告を得ることができたが,計算に必要なそれらの酸素分圧依存性に関する報告を得ることができなかった。ペロプスガイド系酸化物の点欠陥構造を基に拡散係数の酸素分圧依存性を推算し,酸素ポテンシャル分布,構成イオンの流束とその発散を計算する必要がある。一方で,酸素分離膜の動力学的組織変化を実験的に検討するため,SrC_oO_<3-δ>膜とSrCo_<0.8>Fe_<0.2>O_<3-δ>膜を作製した。また,作製した分離膜を高温で両端を異なる酸素分圧に保持できる実験装置を作製した。さらに,この装置に酸素センサーや分離膜の表面酸素ポテンシャルを測定する素子を取り付けた。この実験装置を用いることで,酸素分離膜の動力学的組織変化を明らかにできると共に,酸素透過能や分離膜表面の熱力学的条件を定量的に測定できるようになり,相分離を含む分離膜中の動力学的組織変化を実験的に再現できるようになった。
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