研究概要 |
鋳造産業は, 日本国内で非常に活発な産業であると同時に, 日本の基幹産業である自動車産業をはじめとするものづくり産業における重要な役割を担っている. 昨今, 本産業分野においては, 中国をはじめとする東アジアや東南アジアへその生産場所が移ってきており, 産業の空洞化や景気の低迷を招くおそれがある. この問題を打破するためには, 生産効率の向上・製品品質の向上・生産コストの低下を実現する新たな鋳物生産方式を創出する必要がある. 本研究では, 鋳造メーカーにおける大きな課題であった鋳造プロセスにおける欠陥発生のメカニズムの解明とその対策を打ち出すことを最大の目的とした. 結果として, 以下の3点について明らかにした. 1. 注湯プロセスモデル構築法と注湯制御入力導出法の確立 CFDシミュレータを援用した繰り返し学習制御システムを適用することにより, 複雑な鋳型形状でもカップ内液面レベルを一定に保つことができる流量制御入力を自動的に導出する手法を構築した. 2. 空気巻き込み量を考慮したダイカストプランジャの最適速度制御 ダイカストプロセスにおいて, 金型に溶湯を高速充填するため, 空気の巻き込みによる鋳巣が発生し, 製品品質を低下させる. 本研究では, CFDシミュレータを援用し, 空気巻き込み量を解析する手法を構築し, プランジャ速度の最適化を行った. 結果として, 空気巻き込み量を低減する良好な結果を得た. 3. ダイカストにおけるプランジャチップ形状の最適化 ダイカスト製造プロセスにおけるプランジャチップの形状変化に対する空気巻き込みのメカニズムを明らかにするとともに, 射出時の空気巻き込みを抑え, 製品欠陥の発生を防止できるプランジャチップ形状の最適設計を行い, 実機実験によりその有効性を示した.
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