研究概要 |
都市ごみ焼却灰の溶融固化処理において, 一定速度で冷却する場合を取上げ, それが固化体の材料特性に与える影響を検討することを目的とし, 作製した模擬試料を用いて, 結晶相および非晶質相中の各成分の挙動調査及び鉛の溶出特性調査を行い, 以下の知見を得た。 2K/minで冷却した試料に対し, 主成分のSi, Ca, AlおよびPbについてEPMA分析したところ, Siがより多く存在する部分, Alがより多く存在する部分に分かれており, PbはSiが多い部分に存在することが分かった。Alが多い部分の組成は, 初期組成に比べてAl濃度が高くなっているので, XRDでも確認されたGehlenite(Ca_2Al_2SiO_7)相と考えられる結晶相であり, Siが多い部分は残留した非晶質部であると考えられる。なお, Pbの濃化が進んでいる相は, 他の降温速度で冷却した場合についても同様に非晶質部であった。 次に, 2K/minで冷却中に種々の温度で急冷した試料に対し, JIS-K-0058-1準拠のPb溶出試験を実施したところ, Pbの溶出濃度は試料中のPbO濃度を意図的に多めに設定してあるため, 基準値の10倍に近い0.1mg/kg前後であった。取出温度ごとの溶出濃度には傾向が認められ, 1523Kにおいては低い溶出濃度であったが, 1498Kでは急激に上がり, その後は約0.1mg/kgとなった。これは, 1523Kから1473Kは初晶が試料全体に晶出し始める温度域であるため, 結晶化が進むとともにPbの非晶質部への濃化が始まる。すなわち, 1498Kでは一部のPbは新しくできた結晶相と非晶質相の界面に不安定に存在し, 水に浸出しやすい状態であったため溶出濃度が高くなったと考えられる。1473K以下の温度になると急激な結晶化は終了し, Pbの非晶質相中での拡散も進むため, 溶出濃度は変わらずほぼ一定値を示したと考えられる。
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