加圧ガス雰囲気中で金属を一方向凝固させることにより一方向に並んた円柱状気孔を有するロータス金属の作製が可能であるが、本研究課題ではこの原理を応用し、内型・外型から成る鋳型を有する連続鋳造法を用いて、表層部と内部で異なる組成及び気孔特性を有する複合ロータスアルミニウム合金を創製することを目的としている。これにより内部に気孔率の高い材料を、表層部に強度の高い材料を配置することができれば軽量構造材料を創製が可能であると期待できる。しかし、これまで合金元素量が気孔に及ぼす影響は明らかになっていないため、初年度は研究の第1段階として、アルミニウム合金の組成が気孔生成・成長に与える影響を明らかにした。 水素雰囲気中で連続鋳造法によりロータスAl-Si合金を作成した結果、Si濃度の増加に従って気孔率、気孔径は増加した。気孔は主にデンドライト間の共晶相領域に観察されることから、凝固する際に主に共晶相から共晶界面に排出された水素ガスが気孔生成に寄与していると考えられる。 A6061および純アルミニウムで希釈したA6061を用いて、鋳型鋳造法によりロータスAl-Mg-Si合金を試みた。A6061試料の断面には主に等軸晶が観察され、気孔は長く伸びていなかった。凝固温度範囲が広く組成的過冷却により等軸晶が晶出する場合、固液界面の移動に明確な方向性がなく、生成した気孔は特定の方向を持たずに成長すると考えられる。A6061を希釈した試料においては、初晶α相は柱状晶でその間に方向性のある気孔が観察された。また、温度勾配の増加あるいは凝固速度の現象により柱状晶および方向性のある気孔を生成しやすいことも明らかとなった。 以上から、アルミニウム合金の組成及び作成条件と気孔形態の関係を明らかにした。次年度以降、これらの知見を内型・外型から成る鋳型を有する連続鋳造法に応用し、複合ロータスアルミニウム合金の創製を行う。
|