研究概要 |
加圧ガス雰囲気中で金属を一方向凝固させることにより一方向に並んだ円柱状気孔を有するロータス金属の作製が可能である。本研究課題では,この原理を各種ロータスアルミニウム合金の作製に応用する場合に凝固組織が気孔形成に与える影響を明らかにすることを第一の目的とし,これらの知見を基にして場所により異なる気孔形態を有するロータス金属を創製することを第二の目的とした。 本年度は,水素雰囲気中で連続鋳造法によりロータスAl-Cu合金およびAl-Ti合金の作製を行った。気孔は引出方向に平行に成長した初晶αデンドライトに囲まれた共晶相領域に形成し,デンドライトの成長に沿って一方向に成長した。平均気孔径は平均デンドライト一次枝間隔より数十μm小さく,いずれも引出速度の減少に従い増加した。また,共晶組成を有するAl-33wt.%Cuを用いて作製したロータス金属には,円柱状の気孔が共晶相の成長方向と同様の方向に一方向に成長していることが観察された。さらに、包晶系合金であるAl-Tiを用いて作製したロータス金属には,α相と平行に一方向に成長した気孔が観察された。 また,場所により異なる気孔形態を有するロータス金属を創製するための基礎的な研究として,水素雰囲気で鋳型鋳造法により二方向から指向性凝固を行わせ,異なる方向性をもつ気孔を有するロータスマグネシウムを作製し,凝固過程での鋳塊の温度変化と気孔成長方向の関係を調べた。伝熱・凝固解析の結果と実験から得られた気孔成長方向との比較から,気孔は温度勾配および固液界面の法線方向におおよそ平行に成長していることがわかった。また一方向凝固の場合と異なり,鋳塊内の気孔の中には湾曲した形状を持つ気孔も観察された。これは凝固中の鋳塊内において,固液界面にて成長途中であった気孔が,固液界面前方の温度勾配の方向の変化に沿うように成長したからであることが明らかになった。
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