平成20年度は、中性付近で高強度なハニカムを合成する検討を行った。中性のシリカゾルを単に一方向凍結させただけではハニカムは形成されず、ラメラとなる。そこで、シリカゾルに様々な添加剤を加え、粘度を調製したり、もしくはゲル化させたりすることで、ハニカムを得る努力を行った。添加剤としては、フュームドシリカ、寒天、ゼラチン、デキストラン、ポリビニルアルコールを試した。その結果、ゼラチンと複合化させた場合、最も高強度なハニカムが得られた。さらに、中性条件で合成したハニカムに関し、水を流通させた場合の圧力損失を測定した。その結果、ゼラチンと複合化させ中性で合成したハニカムは、ゼラチンと複合化せずに酸性で合成した従来のハニカムに比べて圧力損失が大きいことが判明した。そこで中性で合成したハニカムを電子顕微鏡で観察したところ、ハニカム孔内部にゼラチンが析出していることがわかった。すなわち、このゼラチンが湿潤状態では膨潤し、ハニカム孔を塞いでしまうことが圧力損失増加の原因であることを突き止めた。そこで、ハニカム孔内部へのゼラチンの析出機構に関し詳細な検討を行った。その結果、マクロ孔径を小さくする、シリカ壁内部にゼラチンが存在できる空間を確保する、等の方法を用いれば、ハニカム孔内部へのゼラチンの析出を防げることがわかった。以上の結果より、生体物質に優しい中性条件で、高強度なハニカムを合成することに成功した。このハニカムは中性、室温以下で合成できるため生体物質との複合化が容易であり、これらの担体としての利用が期待できる。
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