研究概要 |
本研究の目的であるスラグ流における2相間の物質移動を複合反応制御に生かすことを目的に, 今年度はマイクロ流路において形成されるスラグ流の長さと操作条件の定量的な関係と, 2相間の物質移動を利用した複合反応を実施, 反応の効率化の可能性を検証した。まず, マイクロ流路において形成されるスラグ流の長さと操作条件の定量的な関係を導くために, ドデカンと蒸留水によるスラグ流のスラグ流形成実験をT字路(内径1.3, 2.3mm)にテフロンチューブ(内径1.00, 1.57mm)を接続して, 総流量(最大50mL/min)(水相と油相の流量比も変更)を変更した実験を行った。まず, 流路の内径が大きくなるほど, 総流量が大きくなってもスラグ流を形成できることがわかり, 処理量の向上には, 流路径を大きくすることが有効であることがわかった。また, 各流量・油水体積分率・流路サイズにおける生成スラグサイズを整理すると, スラグ長さの流路径に対する比率が線速に最も影響を受けることがわかった。このことから, 線速に主眼をおいて流路の内径・体油水積分率・流量を選択することで、意図したサイズに近いスラグを形成させられる可能性があると考えられる。さらに, スラグ流の複合反応適用への有用性を検証するために酢酸エチル中(油相)に溶解させた1-ナフトールと水溶液中(水相)のジアゾスルファニル酸をスラグ流中で反応させた。油相中の1-ナフトールが水相に移動することで反応が起こる。スラグ流を形成させることで迅速に1-ナフトールが相間移動し, 水相が赤く着色される様子が観察された。従来は1-ナフトールも水溶液とし, 均相系で反応が実施されていた。1-ナフトールは水に難溶であるため原料溶液濃度は低くせざるをえなかった。今回の方法では, 1-ナフトールを有機溶媒中に溶解させて反応場に供給できるので原料溶液濃度を高くできるという利点もある。
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