本研究では、「温度」を外部刺激として用い、操作温度を設定することにより生成物選択性、基質選択性、速度選択性を発現する、初めての「感温性光増感剤」を開発することを目的とする。感温性光増感剤の設計には、アクリルアミド系のポリマーを基盤材料として用いる。アクリルアミド系ポリマーは、低温では柔軟な開いた構造をとる一方、温度上昇にともなうポリマー鎖の脱水和により凝集する性質をもっ。また、これらは、低温では親水性であるが、温度上昇にともなう凝集により内部は疎水性となる。本研究では、このようなアクリルアミド系ポリマーの独特の性質(相転移現象)を利用することにより、生成物選択性、基質選択性、および速度選択性を発現する新規光増感剤を開発する。平成19年度は、光増感剤分子を固定化したランダムポリマーにより、基質選択性を発現する感温性光増感剤を開発することを目的とした。N-イソプロピルアクリルアミドポリマーに光増感剤であるローズベンガルを結合させた新規高分子光増感剤を開発した。本高分子は、酸素分子を活性化することにより酸化剤である一重項酸素を生成する。温度変化にともなう高分子の構造変化により内部の疎水性が変化し、基質分子の高分子内部への取り込まれやすさが温度により変化する。このため、目的の基質だけを温度制御により選択的に酸化させることが可能となった。温度制御により基質選択性を発現させる光増感剤はこれが初めての報告となる。
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