本研究では、「温度」を外部刺激として用い、操作温度を設定することにより生成物選択性、基質選択性、速度選択性を発現する、初めての「感温性光増感剤」を開発することを目的とする。感温性光増感剤の設計には、アクリルアミド系のポリマーを基盤材料として用いる。アクリルアミド系ポリマーは、低温では柔軟な開いた構造をとる一方、温度上昇にともなうポリマー鎖の脱水和により凝集する性質をもつ。また、これらは、低温では親水性であるが、温度上昇にともなう凝集により内部は疎水性となる。本研究では、このようなアクリルアミド系ポリマーの独特の性質(相転移現象)を利用することにより、生成物選択性、基質選択性、および速度選択性を発現する新規光増感剤を開発する。平成20年度は、速度選択性を発現する二種類の高分子光増感剤、(1)ベンゾフェノン結合型N-イソプロピルアクリルアミド高分子、および(2)チオニン内包型N-イソプロピルアクリルアミド高分子カプセルについて検討した。これらの高分子増感剤は、温度変化にともなう凝集状態の変化により、増感剤周辺への基質の取り込みを自在にコントロールすることができる。本増感剤は、低温で大きな反応活性および高温で小さな反応活性を示す特異な機能を発現することを見出した。
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