研究概要 |
層状ペロブスカイト型化合物K_2NbO_3Fを用いて,Nb系メソ構造体およびSi-Nb系メソ多孔体を合成し,昆虫に対して抗幼若ホルモンとして作用するプレコセンI(7-メトキシ-2,2-ジメチル-α-クロメン)合成触媒として評価した。Nb系メソ構造体では,塩基触媒活性の高い触媒ほど高い収率でプレコセンIを生成する傾向が見られ,とりわけ,ラメラ構造を有するpH 10.5で得られたメソ構造体は,ピリジンよりも高い収率でプレコセンIを生成した。この結果から,本研究により得られたNb系メソ構造体は,機能性有機化合物の合成触媒として,均一系塩基触媒の代替となることが期待される。またSi-Nb系メソ多孔体では,酸-塩基両特性を持つ触媒を用いるとプレコセンIの収率が向上することを見出した。そこで,酸-塩基特性について注目しメソ多孔体の合成を行ったところ,多孔体の細孔壁となる出発原料であるK_2NbO_3Fやテトラエトキシシランを,界面活性剤水溶液に対し多く用いると塩基触媒活性が向上することがわかった。他方,これらのSi-Nb系メソ多孔体について,過酸化水素を酸化剤としたシクロヘキセンの液相酸化触媒として評価した。その結果,塩基性が高いメソ多孔体を用いると過酸化水素転化率のみが向上し,酸化反応が進まないことがわかった。一方,塩基性が低い多孔体では,シクロヘキセン転化率と過酸化水素転化率がほぼ一致する結果が得られた。以上より,本研究により得られたSi-Nb系メソ多孔体は,酸-塩基両特性を持つだけでなく,過酸化水素を酸化剤としたシクロヘキセンの酸化触媒としても活性を示すことを明らかにした。
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