研究概要 |
植物は多種多様な二次代謝物質を産生するが,その生理的な意義については不明な点が多い.そこで,当該研究では,植物は酸化ストレスから身を守るために抗酸化物質を生産し,それが結果的として酸化され生理活性を有する二次代謝物質となっているという仮説をたて,抗酸化反応という視点から環境ストレス応答反応における二次代謝の代謝変動解析を行い,植物における二次代謝の生理的な意義の解明を目指した. 本年度は,二次代謝物質として強い生理活性を有し医薬品原料として利用されているアルカロイドに注目し,ニチニチソウを実験植物として環境ストレスに対する代謝変動解析に取り組んだ.まず,前駆体であるcatharanthine,vindolineとその酸化重合物である二量体アルカロイドのvinblastine,anhydrovinblastine,1eurosineの分析系の構築を試み,蛍光検出器用いることによりHPLCでの高感度定量分析系の構築に成功した.また,アルカロイドの産生能が高い系統のシュートカルチャー培養系および植物体への順化系を構築し,当該研究に耐えうる植物材料の準備をした.さらに,各種環境ストレスの負荷方法および代謝物の抽出・精製方法など再現性および精度の高いデータを取得するための各種条件の検討を行い,ストレス応答反応の代謝レベルでの精密解析に耐えうる手法の構築を行った.実際に上記の手法を用いてニチニチソウ葉における解析を行ったところ,光酸化ストレス(近紫外光照射)により前駆体の含量が大きく減少し,二量体の増加が確認された.さらに,低温条件下(4℃)でも同様の現象が認められたことから,当該反応は非酵素的にも進行することが明らかになった.今後,二量体生合成系の環境ストレス応答反応としての生理的意義について考察するために,様々な酸化ストレス条件下で代謝産物一斉解析を行っていく予定である。
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