研究概要 |
まず, 脱水素酵素と補酵素を内包した直径約100nmのリポソームを調製して, 内包酵素の安定性を検討した。脂質膜が存在しない場合, 蟻酸脱水素酵素(FDH)の60℃における安定性は, 補酵素を共存させることにより増大した。また, 還元型補酵素NADHと複合体を形成したFDHは酸化型NAD^+-FDHに比べて異なる構造と高い熱安定性を示すことを明らかにした。リポソーム内において, 補酵素は同様にFDHの熱安定性を増大させた。リポソーム内では, 脂質膜と補酵素の複合作用により, 遊離酵素系に比べてさらに安定なFDH反応系が形成された。次いで, Chlorophyll α(Chl α)を脂質膜に複合化したリポソームを用いる光誘起電子移動反応系の構築について検討した。疎水性の高いChl αは高効率にリポソーム膜に複合化された。Chl α複合化リポソームと種々の電子伝達体間相互作用に及ぼすリポソーム膜内コレステロール, 荷電脂質の影響を蛍光法により明らかにした。最適調製したChl α複合化リポソームを用いてMethylviologen (MV)を電子伝達体とする光誘起電子移動反応を行い, 著しく低レベルではあるが, 電子移動に伴う還元型MVの生成を確認した。さらに, 外部循環式エアリフト型気泡塔にFDH/補酵素系を内包したリポソームを懸濁して, 酵素の安定性に及ぼすガス空塔速度, 補酵素の酸化還元状態及び酸化剤としての銅イオンの影響を検討した。その結果, 気泡塔内気液流動場において, リポソーム内酵素は, 銅イオンが共存する高ガス空塔速度条件下において遊離FDH/補酵素系と比較して高い安定性を示すことを明らかにした。補酵素は酸化還元状態に依存せず気液流動場において安定にリポソームに内包された。 以上より, リポソーム内封入脱水素酵素・光誘起電子移動反応を用いる二酸化炭素還元反応の各要素技術に関する有用な知見が得られた。
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