研究課題
胚性幹細胞(ES細胞)の分化制御に関する研究が世界中で精力的に進められている。この分化誘導においては、胚葉体と呼ばれる凝集塊を形成させるステップを経るのが最も一般的であり、ハンギングドロップ法や、非細胞接着性の基材を用いた浮遊培養法がその作製に広く用いられている。しかし、前者では得られる胚様体の状態が実験者の手技に大きく依存すること、後者では胚様体サイズの不均一性が問題となっている。平成20年度は、直径100μm程度の細胞を含有する球状中空構造を有するとともに、細胞に穏和な条件下でカプセル壁を分解可能なカプセルを開発し、その内部でES細胞が胚葉体様の球状組織体を形成できることならびに、カプセル内から組織体を容易に回収できることを実証した。具体的には、直径約100μmのカルボキシメチルセルロース誘導体からなるゲルビーズをペルオキシダーゼの酵素反応を利用してw/oエマルションを経由して細胞を包括した。その後、アルギン酸誘導体からなる厚さ約20μmのゲルでこのゲルビーズを被覆した後に、セルラーゼ含有培地に浸すことで内部のカルボキシメチルセルロースゲルを分解した。内部に包括された細胞は、包括翌日にはカプセル内で凝集を開始し、1週間後には中空部分を埋め尽くす球状の組織体を形成した。この組織体を回収するためにアルギン酸分解酵素を溶解させた培養培地に浸したところ、1分以内にカプセル皮膜は消失し、内部より球状の細胞塊が培地中に放出された。この球状の細胞塊を細胞培養皿に移したところ、数時間後には培養皿底面に付着し、カプセル皮膜の分解プロセスが細胞に穏和であることが示された。
すべて 2008
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