今年度は、インフレータブル構造体を、既存の再突入飛行体に適用させる事により、再突入飛行環境にどのような影響を与えるかを調べた。対象とする飛行体として、アポロ再突入カプセルを用い、地球周回低軌道からの再突入飛行を仮定し、再突入飛行シミュレーションを行った。シミュレーションに用いる空力特性値については、ニュートン流近似による簡易推定値を用いた。その結果、インフレータブル構造体を取り付ける事により、空力加熱の大幅な低減が可能であることが示唆された。また、インフレータブル構造体を再突入カプセルに対して傾ける事により揚力が発生し、減速度の大幅な改善も可能であることが明らかとなった。 次に、上記のシミュレーションに用いた空力特性値がどの程度正しいかを評価するために、数値流体力学シミュレーションに基づく空力特性の推定を行った。その結果、ニュートン流近似による推定が比較的良い近似となることが明らかとなった。また、インフレータブル構造体を傾けた場合の揚力については、インフレータブル構造体の形状に強く依存する事が明らかとなった。 また、来年度の風洞実験のための予備的な試験として、極超音速風洞を利用した実験を行い、インフレータブル構造体の空力特性の計測およびシュリーレン法による流れ場の可視化を行った。その結果、流れ場の可視化により、再突入カプセルから発生する衝撃波とインフレータブル構造体から発生する衝撃波が干渉することが明らかとなった。これは、衝撃波干渉による空力特性値の大幅な増加が引き起こす可能性があるため、再突入カプセルとインフレータブル構造体の位置関係による影響を十分に検討する事が必要である事が明らかとなった。
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