研究課題
アブレータ炭化層内で起こるコーキング現象を捉えるため、アーク加熱風洞で加熱した供試体の気体透過率と炭化層密度をそれぞれ計測し、電気炉加熱で炭化させた供試体と比較した。アブレータは、炭素繊維にフェノール樹脂を含浸させて製造し比重は約0.3である。600~1200Kで電気炉加熱を行い、異なる空隙率の供試体を作成した。空隙率に対する透過率をフィティングし、数値シミュレーションで使えるよう整備した。供試体形状は、直径約13mm厚さ約1mmである。気体透過率は、供試体に定常的に空気を流して供試体前後での圧力と流量を測定し、ダルシーの法則を使って導出した。また、高密度アブレータ材料をアーク加熱試験し、アブレーション衝撃層内にHe-Neレーザー光を気流に対して垂直に入射させ、レーザー光透過減衰率測定を行った。この際ミラーを使って光路長を長く取り実験を行った。結果を要約すると以下のようである。(1)アーク加熱で得られた供試体の透過率は加熱表面に向かって減少し、密度分布は表面に向かって増加する。コーキング現象をモデル化せずに行ったシミュレーション結果では、実験結果を再現することができなかった。これらの結果は、熱分解したガスが加熱面に向かって流出する際に、熱分解ガスの化学反応により炭化層に固体が析出するコーキング現象を示唆するデータであり、アブレータの質量損失量を正確に理解するためにはコーキング現象をモデル化する必要があることがわかった。(2)レーザー光透過減衰実験では、固体微粒子による透過光減衰は観測できなかった。これは、コーキングが熱分解ガス中に生じるすすが炭化層に吸着することでおこるものではないと推察され、コーキング現象を理解するには、異なる物理メカニズムを調査する必要があることがわかった。
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Transactions of Japan Society for Aeronautical and Space Sciences, Space Technology Japan 7
ページ: 43-47