研究概要 |
本研究の目的は自律小型航空機の自動回避を行い, 複数機による制御コンフリクトを検証するものである. 研究では既存の回避制御則や回避制御システムを模擬し, 特殊な条件において複数機の回避システムについてのコンフリクトを検証する. 今後想定されている高度輸送社会においての航空機の安全性や信頼性向上のための一端を担う研究であると考えられる. 研究活動を通し, 制御コンフリクトに関する問題点を明らかにした. その主な要因として, ・機械と人間(パイロット)の判断に関する齟齪, ・既存の回避システムの能力限界, ・情報伝達の時間遅れ, が挙げられた. これら問題を解決する手段を新たな制御則を設計することにより解決した. 制御手法としては, まず人間的な曖昧さを機械でも表現するためにファジーロジックを利用した制御則を導入している. これは人間が「まだ遠いから入力は弱めで平気」「結構近くなってきたから大きめに回避」など曖昧な表現を数値化する手法である. また, 伝達時間の遅れについては, 逆に機械が保持する絶対時間の概念を用い, 時間遅れを絶対的な時間で計測し, その時間遅れが存在することを利用して新しい制御則を提案している. 制御則は遅延フィードバック制御の要素を取り込み, 情報が遅延していることを加味しつつ, 情報が遅れている分, 早期に回避運動を開始するように設計されている. 設計した制御則を利用することにより航空機の回避制御を大幅に改善することが可能であり, 今後の航空機の安全性向上に役立てることができるものと考えている. また, 本制御則は航空機の回避以外の分野にも適用可能であり, 応用が広いものと考えている.
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