研究概要 |
本研究は,信頼性,安全性や汎用性の向上という点で従来システムより有利であると考えられている柔軟構造エアロシェルを有する大気突入システムについて,その実現にむけて重要な要素である柔軟構造物の高速気流中での挙動及び飛翔体としての空力特性について基礎的な知見を得ることを目的としている。特に,エアロシェルを軽量かつ大型化するために有効な手段として考えているガスの圧力で形状を維持するインフレータブル構造を高速飛翔体に応用することに焦点を当て,風洞実験,数値解析の両面から研究を進めた.今年度は,昨年度に確立した方法に従って,球形状のインフレータブル構造を対象に超音速風洞試験を実施した.本試験では,マッハ数3.0の気流中において,インフレータブル内圧と模型の変形形状及び抵抗係数の関係について詳しく測定し,貯気槽圧力などの一様流条件がそれらに与える影響についても調べた.また,金属半球周りにドーナツ状のインフレータブル構造を配置した実際の大気突入機に近い形の模型に対しても風洞実験を行い空力特性に関する知見を得た.一方,昨年度から準備を進めていたCFDによる圧縮性流体解析と多粒子膜モデルによる柔軟構造解析を組み合わせた数値解析手法により,風洞実験を再現し,現象のさらなる詳細な理解を試みた.その結果,これらの現象は,内圧と一様流動圧の比によって整理されることがわかった.ここで構築した実験手法や解析手法,また,それらから得られた基礎データは将来,柔軟構造大気突入システムを開発する際に大いに役立っと考えている.また,上記の基礎研究と平行して,直径1.25mのインフレータブルフレームを有するフレア型エアロシェルを有する実験機を製作した.本機は,気球からの自由落下フライト試験に使用する予定であり,本研究は机上や実験室内の研究にとどまらず,実験の開発までも見据えた研究につながっていくと期待している.
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