研究概要 |
本研究はロケットノズル開発プロセスにおいて問題となる非定常剥離流れに起因した過大な振動(横推力)に着目し,横推力評価に求められる数値シミュレーション技術を検討する. JAXAにて行われた実験結果を対象に,RANS解析を試みた.RANS解析では乱流モデルとしてBaldwin-Lomax(BL)モデルとSpalart-Allmaras(SA)モデルを採用した.パラメータチューニングを要するが,いずれの乱流モデルも剥離位置に関しては概ねよい一致を示した.ただし,ノズルリップ付近には110m/sほどの循環流が発生していることが実験結果から観察されるわけだが,BLモデルではこの循環領域を正確に捕えることができなかった.一方,SAモデルも壁静圧分布で比較する限りこの循環流を正確にシミュレーションできているとはいい難い結果となった.壁静圧分布を算出するためにはこの循環流,特に剥離剪断層の挙動をより精度よく解析することが重要であることが分かり,そのためにLESの適即を試みた.しかし,必要となる格子点数を試算すると数億点オーダーとなり,設計開発の現場で容易にできる計算ではまだないことが分かった.そこで壁の乱流境界層のみBLモデルを用いたRANSを併用するRANS/LESハイブリッド法を採用して解析を行った.その結果,剥離剪断層が遷移せず,BLモデルに近い結果となった.LESを用いた解析でも乱流遷移を促すために例えばリスケーリングといった方法で擾乱を入れる必要があるわけだが,RANS/LESハイブリッド法を用いたロケットノズルの剥離流れ解析においても不安定性のトリガを何らかの方法で導入しなければならないことが分かった.不安定性の入れ方に関してはいくつか提案されている方法が有り,来年度はその導入を行う予定である.
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