研究概要 |
ロケットノズルでは非定常剥離流れに起因した過大な振動(横推力)が設計上の大きな問題となっている.そこで,本研究では横推力評価に求められる非定常乱流シミュレーション技術を検討した. これまでの研究を通してLES/RANSハイブリッド法が計算負荷という観点からLESよりも有望ではあるが,勇断層の不安定性を誘起するための擾乱を人為的に負荷する必要があることが分かっている.そこで,乱流モデルとしてはImproved DDES (IDDES)モデルを新たに採用した.擾乱はリスケーリング法を用いて導入したわけだが,リスケーリング法は境界層の内層・外層に対してそれぞれ壁法則・速度欠損則に基づいて擾乱を成長させる方法である.IDDESでは変動のある流れ場に対してWall-Modeled LESとなっていることから,本研究では外層のみに適用することにした.更にリスケーリング法を圧縮性流れに適用する場合,速度ベクトルの他に密度・温度・圧力のいずれかも選択する必要がある.境界層内部の擾乱の中で圧力の変動が最も小さいことが過去の研究から分かっているため,圧力をまずは選択し,更に温度を加えた計5成分の擾乱を成長させるようにした.その結果,計算の安定性を向上させることが可能となった.上記手法を用いてJAXAにて行われた実験に適用した結果,壁面乱流境界層の変動が剥離勇断層の変動を誘起するということが分かり,擾乱の導入により剥離後の壁静圧の上昇が緩やかで実験結果と傾向が一致するようになった.ノズルリップの壁静圧に関しては実験結果よりも高い値となり,剥離領域の循環流に関しては実験ほど強くはならなかったと言える.最後に,LE-7Aといった液体ロケットエンジンでの非定常剥離現象を調べるため,LE-7Aエンジンに特徴的な冷却管形状を模擬した解析を実施し,ノズル内面形状と剥離流れの関係を調べた.
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