研究概要 |
東アジア縁域における汚濁水域を対象とした物理・生態系モデルの構築については,前年度までに拡張した機能について機能拡張を行なうとともに,実海域に適用し精度確認を行なった.観測データが豊富な瀬戸内海を対象とした検討を特に進めた.機能拡張は,干出・冠水モデルにおいて,干出エリアにおいても3次元の水面表現ができるように改善を行なった.これは,将来的に津波による被災時における環境へのインパクト評価を視野に入れたためである.この瀬戸内海を対象とした検討においてモデルの適用性を評価するため,波動特性の検証,とくに周期特性や同調現象の再現性について検討を行なった.この成果は国際会議に投稿しており,2010年5月に発表予定である. 汚濁負荷の定量化を対象とした検討については,衛星データの解析結果として,我が国と同様な直立護岸とともに干潟の存在が多く確認された.そこで,国内の臨海越における課題について検討をした.具体的には護岸付着生物と青潮である.その結果,付着生物の個体群動態については河川水の動態と強い関係があり,とくに成層状態との因果関係が示唆された.青潮については毒性源としての硫化水素のモデル化について検討をすすめ,現地における青潮時の硫化水素動態の現地調査,モデル構築を進めたが現地データとの比較による精度評価において課題が残った.これらの中国沿岸域における適用性については,データの入手が困難であったため,可能性の議論に留まってしまった. 社会システムと汚濁負荷の関連については,都市化と汚濁負荷量については高い相関が認められたものの,それらの連関とそれをどのよりに低減させうるかという議論で国内の専門家と議論を深めたが,いまだ結論には到っていない.
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