本年度は、前年度までに開発されたデジタルカメラを用いた逆解析による固有ひずみ・溶接残留応力評価システムの基礎性能試験を行った。その結果、本手法により、固有変形主要4成分を独立した形で同定することが可能であることが分かった。ただし、残留応力の同定に関しては、残留応力の基となる固有ひずみの分布関数を作成した上での同定には成功したが、分布関数を決めずに残留応力場を同定するためには、同定するマトリックスの安定化や取得画像データの高精度化、並びに解析のためのデータの選択方法などの点において工夫が必要であり、十分に高精度と言える残留応力場を得ることができなかった点が今後の課題である。ただし、固有変形を高精度に、しかも高速・高精度に同定する手法が構築できたことは、今後の溶接変形量の予測に対して重要であると考えられ、今後の産業界への積極的な応用が期待できるものである。 また、計算高速化に関しては、GPU(Graphic Processing Unit)を用いた高速化手法を新たに構築し、また、OpenMPを用いた複数コアCPUを並列化する方法を導入することにより、PC1台を用いて数分以内の計算時間を実現している。さらには、時空間微分法の導入により、約1分程度の計算時間にて画像解析が可能であるシステムを構築した。 以上のように、本研究により開発されたシステムは、画像による変形計測システムとしても高速・高精度である点において有用であり、さらには、固有変形、残留応力評価手法としても使用可能であるため、今後の発展に期待できると考えられる。
|