再利用可能な油水分離シートを作成するために、これまで吸水性を中心に研究してきた。本研究では吸油性に重点を置き、吸油性材料の選定からはじめた。吸油性材料としてアクリル酸オクタデシル(ODA)ゲルを用いた。同ゲルは、九州大の佐田らのグループがそのイオン性から大きく体積変化を起こすと報告があった。そのODAゲルの体積変化を利用して吸油を行うことを試みた。特に吸水性ゲルであるN-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)ゲルとの比較のためにもODAゲルの感温性について調べた。このとき同時に架橋剤を変化させた種々のODAゲルを用意し、その(吸油性)体積変化も調べた。本実験では吸油性を調べるに当たり、溶媒にベンゼンを用いた。計測はODAゲルをベンゼン中におき、種々の温度でのODAゲルの直径を読み取り顕微鏡で計測し、その体積比を得た。これらの実験結果からNIPAゲルでみられる体積相転移現象の温度範囲では、若干の変化はあったものの、NIPAゲルのような著しい体積変化は見られなかった。しかしながらゲルの架橋密度が増すと膨潤度が低下するというゲルの特徴は見られた。今回は室温近辺で体積変化をすることが望ましいのでこの範囲で実験を行ったが、今後もう少し高い温度で調べるつもりである。また、吸油性という観点では、十分溶媒を吸収する結果が得られたが、吸収した溶媒を排出するという再利用の観点からはまだまだ不完全なものである。今後、吸収した油を排出するという観点に重点をおき詳細に実験を進める予定である。
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