研究概要 |
炭酸塩シンターについては地質学的には古くから研究がなされてきているが, そのほとんどは地球化学的な観点から無機化学反応による沈殿として捉えられてきた. しかしながら本研究では微量元素や微生物または有機物介在の観点から, 従来とは異なった炭酸塩シンターの生成過程について考察をおこなう事を目的とした. 秋田県小坂町奥奥八九郎温泉における炭酸塩シンターについて, 鉱物組成や構成鉱物の評価を行った結果, 地表の温度圧力条件では準安定であるアラゴナイトが特徴的に見られた. これは他地域の同様の温泉における炭酸塩シンターがカルサイト主体であることを考えると特徴的であった. また, 炭酸塩シンターの堆積速度も速く, これらは温泉水の分析結果とそれをもとにした室内実験から, アラゴナイトの形成には温泉水中の鉄イオンと温泉水の移動速度が重要な役割を担っている事が推察された. 温泉に存在する微生物については, 採取した温泉堆積物からの抽出および培養によりその存在が確認できたものの, この微生物の存在が炭酸塩シンターの形成に影響をおよぼしている明確な事実は発見できなかった. しかし, 多孔質堆積物の形状からはなんらかの関連が示唆される. これらの結果から, 二酸化炭素の地中貯留地における岩層については鉄が多量に含まれる場合, あるいは貯留地周辺や貯留溶液に鉄イオンを存在させることにより, 二酸化炭素の岩石化や漏洩シール層の形成が期待できる.
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