循環型社会の実現へ向け、廃棄物最終処分量の削減が喫緊の課題として社会から要請されており、焼却・溶融処理残渣を有効利用する取り組みがなされつつあるが、なお年間680万トンの焼却残漬が埋立処分されており、最終処分場の容量不足が依然課題となっている。この問題を解決するためには、都市ごみ焼却残渣をリサイクル資源として再利用することが、最も有効な手段である。 焼却残渣の土木資材等への有効利用のためには焼却残渣中に含有される有害重金属の存在形態を利用先の環境において長期に安定なものに改変する必要があるが、酸性雨の影響を考慮すると焼却残渣本来のアルカリ性の環境のみならず、中性から弱酸性のpH領域においても重金属を安定して焼却残渣内に保持し、外部への溶出を防ぐ必要がある。 本研究は、都市ごみ焼却残渣をリサイクル資源として再利用するため、水熱処理による化学的安定性の強化と炭酸化処理による物理的安定性の強化を行うことで、土木資材として求められる重金属の非溶出性と力学的強度を併せ持つ環境安全なリサイクル資源の創出を試みるものである。 本年度は水熱処理による重金属の安定化について最適な条件を見つけるための研究を行った。試料を微粉砕することにより熱水との反応性を高めた結果、熱水性鉱物の生成が促進され、幅広いpH条件において重金属の溶出が抑制されることを見出した。また、高い重金属安定性を持つ粘土鉱物を合成するための化学組成調整剤の添加量の検討の結果、従来の約1/4の添加量での粘土鉱物生成を確認した。
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