国際熱核融合実験炉ITERでは標準運転モードとして改善閉じ込めモードの採用が決定された。しかし、改善閉じ込めモードで普遍的に見られるELM(周辺局在化モードと呼ばれる不安定性)によるダイバータ板への瞬間的な熱と粒子の負荷はダイバータ板に致命的なダメージをあたえる要因である。そのダメージを軽減するためにELMに由来する熱と粒子の輸送を理解することが急務となっている。この要求に対し本研究ではELMによって放出された熱や粒子に起因するプラズマの過渡的な輸送機構を解明することを目的とし マイクロ秒の時間スケールで電子温度と電子密度の変化を同時に多視線で測定する可視分光器を整備した。具体的には現有の干渉フィルター型分光器の光検出部をフォトダイオードアレイから光ファイバーバンドルと光電子増倍管を組みあわせた光検出器に取り替えた。また、光電子増倍管の初段のアンプを1MHzに高周波数化の改良を行った。今年度には特に分光器内部の迷光を抑え、光軸を調整して信号・ノイズ比を向上させつつ実験測定を行った。しかし、実際には目標であった5から10視線での測定に十分なほどには信号強度を上昇させることができず、2視線のみでの計測に留まった。その結果によると、外側ダイバータにELMによる熱・粒子が到達すると、電子温度・密度が上昇し始め、その粒子束が最大値をとる直後に電子温度が低下し、少し遅れて電子密度が低下する。その後、両者とも数秒の時間スケールでELMが発生する前の値まで回復する。ELM発生時にはこのようなプラズマの変化が繰り返される。一方、内側ダイバータではELMが到達しても電子温度・密度に変化が見られなかった。この理由については現在考察中である。
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