平成19年度は本研究課題の初年度であり、次年度以降の本格的な測定のための予備調査を行った。 大阪大学核物理研究センター(RCNP)において、150MeV陽子を7Liターゲットに入射し生成した準単色中性子ビームを用い、測定場におけるバックグラウンドイベントの混入率を実測した。このデータと放射線輸送コードを用いたシミュレーション解析の結果から、本測定に最適なビームコリメータとシャドウブロックの設計・製作を行った。測定時にこれらを利用することにより、測定場におけるバックグラウンドイベントの混入率を1/10以下に抑え、統計精度の良いデータの取得が可能となる。 原子力機構高崎量子応用研究所イオン照射研究施設(TIARA)にて、75MeV準単色中性子ビームを用いた炭素原子核に対する中性子弾性散乱断面積を測定した。測定する散乱角度は実験室系で15度の一点とし、散乱サンプルから3.5m下流に中性子検出器として直径12.7cm厚さ12.7cmの液体有機シンチレータを配置した。非弾性散乱イベントは飛行時間法により分離し、低励起準位からのイベントは核反応計算コードTALYSの計算値に基づき補正した。導出された中性子弾性散乱断面積の値は評価済みの核データの値と誤差の範囲内で一致した。この成果により、本課題の測定システムおよびデータ解析手法の妥当性が実験的に証明されたと共に、RCNPにおけるより高いエネルギー領域での測定の展望が得られた。
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