平成19年度の研究成果を基に設計したビームコリメータおよびシャドウバーを用い大阪大学核物理研究センター(RCNP)において、中性子弾性散乱断面積測定を実施し、測定システムの妥当性の検討およびビーム条件の最適化を行った。 設計したコリメータとシャドウバーを利用することで、RCNPにおいてもバックグラウンドイベントを1/10以下に抑えられることが分かった。また、シンクロトロンのビーム電流や加速周波数を考慮し、データ取得のために最適な測定システムのパラメータを決定した。 140MeV陽子ビームを^7Liターゲットに入射して生成した準単色中性子ビームを用いた測定では、炭素原子核に対する中性子散乱断面積が導出された。得られた実験データは、反跳陽子法で測定された実験データおよび評価済み核データと比較された。実験データ同士は非常に良い一致を示し、本課題で検討している液体有機シンチレータと飛行時開法による測定手法は、より簡便で高効率な測定系で従来の反跳陽子法と同等の精度を与えることを実験的に証明した。また、最前方角度領域で核データが実験値を再現できておらず、評価に用いた光学模型ポテンシャルに問題のある可能性を指摘した。
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