研究概要 |
本研究の目的は、楕円の2焦点と任意の楕円状の点を結ぶ線分の和は常に等しいという原理を利用し、入射及び試料からめ散乱ビームを反射させて全ての中性子のフライトパス長を揃え、スピンエコー実験におけるビーム発散によるエネルギー分解能の減少を抑えることである。 平成19年度は、中性子共鳴スピンエコー法の高エネルギー分解能化を実現するためのビーム発散補正ミラーの設計,試作及びその集光性能測定実験を行った。1次元楕円面を近似した円筒面基板にNiの3倍の臨界角をもつ中性子スーパーミラーを成膜した。このようにして試作した1次元曲面ミラーの中性子ビーム集光性能測定及び形状測定を行った。中性子ビーム集光実験では、0.8mm幅のスリットからの波長0.39nmの発散ビームを試作した円筒面ミラーにより反射させ、 440mm下流の楕円焦点において同じザイズに集光できることを実証した。これは、フライトパス長のばらつき0.0025%以下を満たす楕円面集光が必要なスピンエコー実験に耐えうる集光性能をもつことを意味する。形状測定でば、理想的な円筒形状に対して±20μm程度の形状誤差があることがわかり、次年度ではこの形状誤差をさらに小さく抑えるために制作方法を再検討する。 また、一連の集光ミラー開発過程において、スーパーミラーの高性能化に関する研究開発を進めた結果、Niの臨界角の3、4、6倍の臨界角をもつスーパーミラーで臨界角における反射率がそれぞれ90、80、40%という世界最高級の高反射率を実現した。
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