本研究では、「次世代がん診療装置CROSS(Correlation Response Observatory for Scintillation Signals)計画」のプロトタイプとしてCROSS-miniを完成させた。その検出器を用いた卓越した業績の一つとして、平成20年12月1日に米国科学誌Radiation Researchの速報版に報告し、同日、文部科学省にて記者会見を行った「放射線源から放出される放射線の革新的な計測方法の開発」を挙げる。 放射線計測器は常に放射線の量やエネルギーの絶対値を計測できるものではなく、基準となる放射線源で較正することで、正しい値が計測できる。従来の放射線源を用いた放射線計測器のエネルギー較正は、放射線源の構造によるエネルギー損失は無視でき、エネルギー分布はピークを中心として対称な正規分布である、という前提のもとに行われてきた。しかし、厳密な計測によってこれらの前提が必ずしも成立しないことを確認した上、放射線源中での放射線の相互作用による影響を統計学的に計算し、その影響を実測結果にフィードバックする事で、より真の値に近い放射線のエネルギーや放射線量を測定する革新的な方法を開発した。
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