研究概要 |
マイクロチャネルプレート(MCP)検出器を用いた透過型のイオン検出器の開発を行った。この検出器はイオンが炭素薄膜を通過した際に発生する二次電子を測定する。測定感度は二次電子の発生量に依存するため,これが少ない水素,ヘリウムなどの軽元素に対しては感度が低い。軽元素に対する感度を増大させるために,炭素薄膜の二次電子放出面に他の物質を蒸着して,二次電子発生量を増大させた。蒸着する物質として白金,酸化マグネシウム,フッ化カルシウムの3種類を用いた。チェッキングソース(^<241>Am)からのアルファ線を用いて測定を行ったところ,フッ化カルシウムを蒸着した時の検出効率が88%と最も高かった。この値は炭素薄膜を単独で用いた時のおよそ2倍である。 以上の結果に基づいて,タンデム加速器を用いて,さまざまなエネルギーの水素,ヘリウム,炭素イオンに対する透過型検出器の検出効率の測定を行った。二次電子放出用の薄膜には炭素薄膜(10μg/cm^2)にフッ化カルシウムを15μg/cm^2蒸着したものを用いた。得られた検出効率の値は炭素に対しては90%以上,ヘリウムに対しては60%から90%,水素に対しては15%から60%だった。特にエネルギーが5MeVから25MeVの炭素については検出効率が97%以上という高い値が得られた。透過型検出器をスタート,シリコン半導体検出器をストップとしてTOF-ERDA測定を行った。測定系の時間分解能はおよそ1nsだった。ヘリウムビームを用いて,PET膜,および炭素注入シリコン試料の測定を行い,炭素,酸を分離して測定することに成功した。
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