研究概要 |
本年度は, まず前年度に開発した配電ネットワークのモデルと, 需要家の電力貯蔵装置導入計画モデルを用いて, 需要家が太陽光発電および電力貯蔵装置を導入した場合の配電系統の電圧変動をシミュレーションした。すなわち, 分オーダの日射量データから推定された太陽光発電の出力変動を考慮した上で、エネルギーマネジャーが急峻な電圧変動を吸収するため個々の需要家における電力貯蔵装置の運転パターンを変更することによって, どの程度の大きさ・頻度の電圧変動であれば, 需要家からの協力のみで制約逸脱を解消できるかを評価した。ここで, エネルギーマネジャーは、各需要家における電力負荷曲線と電力貯蔵装置の充放電パターンの情報を収集可能であるものと仮定すると、1年間を通して最適な導入容量と充放電パターンを決定する最適化問題が解くことになるが, 求解アルゴリズム上の工夫を行うことにより厳密な最適解を実用的な時間で求めることが出来た。 次に, 上述のシミュレーションモデルに基づきエネルギーマネジャーと需要家の協調運用手法として, 電力貯蔵装置の導入容量に対して経済的な補助を与えることを想定し, 電力貯蔵装置を導入する需要家とネットワークを運用するエネルギーマネジャーの観点から, それぞれの経済性に与える影響を評価した。評価結果を出来るだけ一般化するため, ネットワーク内の需要家分布が異なる複数の配電ネットワークを想定し評価した結果, 貯蔵装置を導入する需要家にとっては, あまり大きくはないもののある程度の経済的メリットが得られることを明らかにした。また, エネルギーマネジャーにとっての経済的メリットは, 需要家の位置に応じて効果が異なり, 配電線フィーダの末端付近に貯蔵装置が導入される場合には電圧制御の感度が高くなるため, 協調運用の効果も高くなることを示した。
|