研究概要 |
本研究は二酸化炭素(CO_2)の臨界点近傍でCO_2とジエチルカーボネート(DEC)とを混合させたときに現れる大きな発熱に着目し, この熱効果を利用した環境対応型の給熱システムの実用化を目的として着手したものである. 本年度は, 昨年度改良を行ったCO_2供給部に基づいて熱回収実験を行った. また, CO_2に組み合わせる溶剤の検索も昨年度に引き続きあわせて行い, 以下の知見を得た. これらの結果は, 本研究で提案する環境対応型の給熱システムの実用化に向けて大きく寄与するものと考えられる. 1. 給熱システム運転において, 昨年度課題となった流体の高流量におけるCO_2供給圧力の低下を解決することを目的として, 吐出し空気量を大きなコンプレッサーを導入し, 熱回収実験を行った. その結果, 流体の高流量における給熱システムの安定稼働が可能となった. 2. 上記1. を踏まえて, 混合により発生した熱量のさらなる回収効率向上を目指して, 混合部を昨年度検討した六方多管式からミキサーを2つ直列に連結した直方式ミキサーに変えてシステムを作動させた. その結果, 最大回収熱量5339J/mol, COP2, 40を実現した. 3. CO_2とDECの混合による発熱のみならず, 流体の圧縮による発熱を給熱システムに活用することを目的として, ブースターによる流体の圧縮後に熱交換器を設置した. 既存の流体混合後の発熱を捕捉する熱交換器に今回新たに設置した本熱交換器を組み合わせて熱回収実験ならびに水温の測定を現在行っており, 操作条件を検討している. 4. CO_2と組み合わせる流体としてDEC以外に大きな熱効果が得られるかどうかの検索を, 混合熱の測定を通して行った. 今回はエーテル結合を有するMTBEならびにγ-ブチルラクトンに着目し, CO_2+MTBE, +γ一ブチルラクトン系の298-303K, 6.0-65MPa, ならびに308K, 5.0-7.5MPaにおける混合熱の測定を精密熱量計を用いて行った. その結果, 両系の発熱の最大値は298K, 6.0MPaにおいて約7-8kJ/molであり, DECを用いた場合の結果と比較すると最大発熱量はやや小さな値であったが, 給熱システムの適用に対応可能な結果を得た. なお, CO_2+MTBE系については正確な混合熱測定を目的としてCO_2とMTBEの流量変化に伴う測定結果の影響について検討を行った.
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