1)シマヘビにおいて先行研究と合わせて188の遺伝子がFISH法によってマッピングされ、そのうちZ染色体へは24の遺伝子がマッピングされた。24のうち3遺伝子がZだけでなくW染色体にもマッピングされ、その中には性分化関連遺伝子の一つであるCTMB1があった。また、CTNNB1はZとWの対立遺伝子間で塩基配列が異なり、対立遺伝子の両方が発現していることも明らかとなった。 2)前年度から引き続き性分化関連遺伝子のクローニングを行った。これまでにDMRT1、SOX9、WT1、CBX2、WNT4、FOXL2、CYP19A1、NR5A1をクローニングした。FOXL2、NR5A1以外の遺伝子についてFISHを行った結果、全て常染色体にマッピングされたことから、これらの遺伝子はヘビにおける性決定の最上流遺伝子ではないことが示唆された。 3)シマヘビ雌2個体からそれぞれ9個の受精卵を得た。前年度の結果から産卵後8〜17日の間で性腺の性分化が起こると予想できたため、2個体から得られた受精卵を産卵後10日目と15日目に解剖した。外部生殖器や性腺の形態を監察した結果、10日目の胚では雌雄差が見られなかったのに対して、15日目では雌雄差が見られた。 4)RT-PCR法によって産卵後10日目と15日目の胚の生殖腺におけるDMRT1、SOX9、FOXL2、CYP19A1の発現量の雌雄差を調べた結果、両日においてDMRT1は雄で、CYP19A1は雌で強い発現が見られた。SOX9とFOXL2については雌雄差が見られなかった。これらの結果から、シマヘビの性腺における遺伝子発現レベルでの性分化は産卵後10日目より前から起きていることが示唆された。今後は産卵後10日目より前の性腺において発現遺伝子の雌雄差を網羅的に比較することによって性決定の上流に位置する遺伝子をつかまえたいと考えている。
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