まず栃木県内の野生集団(6カ所)からキバナアキギリを採集し、本学キャンパス内の林床に鉢植え集団を作成し、栽培条件を決める予備実験をおこなった。また、これらのキバナアキギリの葉から抽出・精製したDNA試料から、trnL-Fを含む領域をPCR法により増幅して配列決定した。このデータを用いて既知の同属種との類縁関係を推定すると、キバナアキギリはサルビア属の中にある3つの分岐群のうち、アジア産種を含む第三分岐群に属することがわかった。よって本研究の目的であるキバナアキギリの父親判定に用いる遺伝マーカーの開発には、同属の近縁種における既知のDNA配列情報を利用できる可能性が示唆された。 一方、マルハナバチと人工花を用いた室内実験と野外観察により、ハチ個体の空間移動様式にはルート巡回と地域集中探索という2つのモードが見られること、ルート巡回は株の位置を学習した個体によってのみ行われることを証明した(学術論文1・2)。また、個体間の競争が激しい場所ほど探索型から巡回型への切り替えが適応的になるという先行研究の理論的予測を確認するための室内実験をおこなった。その結果、競争の激しさによらず、個体は探索型から巡回型へと学習にともなって行動を切り替える傾向があること、巡回型は探索型よりも競争採餌において高い成績をおさめることを証明することができた(学会発表1)。
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