研究課題
若手研究(B)
高度な社会性を獲得したシロアリ類には、巣の防衛を担うソルジャーが存在する。ソルジャーは、特殊な形態により自らは摂食できず、巣内の割合は一定に保たれる必要がある。ソルジャー分化の調節に関しては、幼若ホルモン(JH)が重要な役割を担うことが知られるが、初期(王と女王による創設直後)巣では、ソルジャーが長期間1個体しか存在しないことが知られ、親個体による分化調節の存在が示唆される。本研究では、親個体による兵隊の認識と分化調節の機構を明らかにすることを目的とし、系統的に重要な複数種を材料として初期コロニーを作製して解析を行った。まず、ヤマトシロアリとネバダオオシロアリの初期コロニーを作製し、ソルジャーが出現した後に、コロニー状態を変化させて、JHによるソルジャー分化誘導に如何なる影響が与えられるかを調べた。その結果、生殖虫の有無により、JHによるソルジャー誘導率には大きな違いが見られ、生殖虫の存在下では有意に分化率が低下することが明らかとなった。また、幼虫のJH結合タンパク質(ヘクサメリン)遺伝子の発現量は、巣内のソルジャーを取り除いた後で大きく低下することも示された。続いて、コロニーの発達に伴うソルジャー数を調査すると同時に、親個体との接触で幼虫に如何なる生理的な変化が見られるのかを解析した。ヤマトシロアリの場合には、創巣後7.5ヶ月経過したコロニーでソルジャーが2匹存在する場合が観察され(約30%)、飼育下で2匹目の兵隊が出現するタイミングをある程度把握することに成功した。ネバダオオシロアリの初期コロニーでは、親個体と物理的な接触がない限り新規のソルジャーは出現しないことを実験的に確かめた。その際の子虫の生理的な状態を、幼若ホルモン結合タンパク(ヘクサメリン)遺伝子とインシュリン受容体遺伝子の発現量を経時的に比較することで推察した。その結果、親個体の接触下では両遺伝子とも発現量が大きく変動していることが示された。
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