研究概要 |
本研究の目的は、大型動物からの被食環境下での植物種間の正と負の相互作用を明らかにすることである。そのために、刺毛をもつ防御植物(イラクサ)と防御形質をもたない植物(イヌタデ)との相互作用を解析した。本年度は、以下の課題について研究を進めた。 1. イラクサとイヌタデの空間分布関係 奈良公園内で防御植物(イラクサ)の存在する場所に1x1mの調査区5区を設置した。約2カ月おきに(5, 7, 9, 10月)に各調査区内でのイヌタデの空間配置、生存、個体サイズ、繁殖量を記録した。結果、イヌタデは個体が空間的にランダムに死亡した場合と比較して、イラクサの近接で生き残っている傾向が統計的に検出された。 2. 植物間相互作用の進化的変化 昨年度の解析結果では、野外条件でイラクサからイヌタデへの保護効果は十分に検出されなかった。その理由として、長い被食歴下でイヌタデが適応進化(矮小化)している点があげられる。矮小型イヌタデは、防御植物からは競争圧をより強く受けたのではないかと予想される。 そこでこの予想を検証する野外移植実験を行った。被食環境に適応していない標準型イヌタデと矮小型イヌタデを、それぞれ奈良公園のイラクサの下と外に移植し(各25個体)、移植後の生存、成長を追跡した。結果、防御効果は標準型イヌタデに対してのみ発揮された。
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