研究概要 |
在来種カンサイタンポポの繁殖過程が外来種セイヨウタンポポによって干渉れることを野外観察・実験および室内実験によって明らかにし,同様の作用がオナモミ類においては外来種同士で生じていることを実験によって示した。これらの実証研究と既存の理論研究に基づく考察から,現在進行している,あるいは過去に生じた外来種による在来種の置き換わりの要因として,近縁外来種による繁殖干渉作用がきわめて重要な意味を持つと結論付けられた。 タンポポ類における野外観察・実験では,周囲に多くの外来種が存在している場合に在来種の結実率が低くなることを複数の調査地でのデータらから示した。また,外来種の花を除去すると在来種の結実率が有意に増加することも示した。外来タンポポによるこの作用が及ぶ範囲の推定を,結実率の解析による統計的な手法,および蛍光顔料を用いた実験的な手法によって行い,半径2〜5mであるという推定結果を得た。以上の結果は,在来タンポポ衰退の要因として外来種の存在が極めて重要であることを示すだけでなく,外来種の影響を軽減する具体的な手法として,周囲数メートルの外来種の花を摘み取るという作業が有効であることを示唆している。 オナモミ類については,在来種はほぼ自然絶滅状態にある一方で,複数の外来種が侵入・定着している。それら外来種のうち,大阪周辺ではオオオナモミとイガオナモミが多く見られる。人工的に作ったパッチを用いた実験から,イガオナモミはオオオナモミから一方的に繁殖干渉を受けていることを明らかにした。野外では両者が同所的に成育しない要因として,この繁殖干渉が重要であると考えられる。また,オオオナモミによる干渉作用は在来種の絶滅要因としても重要であった可能性が示唆された。
|