タンポポ類における繁殖干渉が在来種の個体群レベルでの衰退をもたらした可能性を検討するため、野外での個体群動態パラメータおよび繁殖干渉の強さを組み込んだ個体ベースモデルを構築し解析を行った。その結果、外来種による繁殖干渉を考慮したときにのみ、速やかな在来種の衰退が再現できることが示さた。 オオオナモミ・イガオナモミ間の繁殖干渉については、イガオナモミが一方的に影響を受けることが確かめられた。さらに塩分耐性を調べ、イガオナモミの耐性が非常に大きいことを明らかにした。このことから繁殖干渉によって両種は共存できないが、塩分耐性の強いイガオナモミは沿岸地を生息地とすることで結果的にオオオナモミによる繁殖干渉を逃れていることが示唆された。 3種のセンダングサ類、 2種のイヌノフグリ類について調べた結果、在来種センダングサが2種の外来種アメリカセンダングサ・コセンダングサから、在来種イヌノフグリが外来種オオイヌノフグリから、それぞれ繁殖干渉を受けることを明らかにした。在来種から外来種への繁殖干渉はなかった。以上の通り、研究対象とした全ての近縁種同士で繁殖干渉が検出され、野外で希少種となっている種が常に繁殖干渉を受けていた。またタンポポ類についてはシミュレーションモデルによる解析からも繁殖干渉が在来種衰退にとって重要な要因であったことが示された。繁殖干渉はこれまでほとんど実証例はなかったが、本研究により外来種問題の極めて重要で普遍的な要因となっていることが示された。また、繁殖干渉に考慮した外来種防除を行うことによって効率的に在来種を保全できる可能性が示された。
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