研究概要 |
北方林樹木の開花の分子機構を明らかにするため,北方林主要構成樹種であるカラマツ属グイマツ(Larix gmelinii var.japonica)からシロイヌナズナ花成決定遺伝子LEAFYの相同遺伝子LgLFY,LgNDLY,およびシロイヌナズナ花器官形成遺伝子AGAMOUSの相同遺伝子を単離した。子LgLFY,LgNDLYはどちらも,翌年開花する花器官が形成される芽で高い発現が認められた。開花した雄花,雌花でも発現が認められたものの芽での発現より低いことから,これらの遺伝子は,雄花・雌花の形成に加え,花芽の決定に関与すると考えられた。芽における発現開始時期を調べたところ,LgLFYは花芽形成が開始すると考えられる5月から増加し9月に減少することがわかった。一方,LgNDLYではそのような季節変動は認められなかった。グイマツAGAMOUS相同遺伝子は,翌年開花する花器官が形成されていると考えられる芽に比べ,開花した雄花および雌花で20-30倍の高く,グイマツの花器官形成に関わると考えられた。芽においてAGAMOUS相同遺伝子は7月から発現が認められたことから,LgLFYは花器官形成より前に発現が開始しグイマツの花成の決定に関与すると考えられた。 そこでLgLFYの機能を調べるため,カリフラワーモザイクウィルス由来の35Sプロモーターを用いてLgLFYを過剰発現したシロイヌナズナ形質転換植物(35S-LgLFY)を作出した。これらの形質転換植物の花成を調べたところ,野生型に比べ遅咲きの傾向を示した。これまでに多くの植物種においてLEAFY相同遺伝子は花成促進に機能すると報告されている。それにも関わらず35S-LgLFY植物が遅咲きの表現型を示したのは,LgLFYを過剰発現させたことでLEAFYの発現または機能が抑制された可能性が考えられる。
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