北方林樹木の開花の分子機構を明らかにするため、北方林主要構成樹種カラマツ属グイマツ(Larix gmelinii var.japonica)から花芽形成遺伝子を単離し、それらの遺伝子の発現と花成との関係を調べてきた。これまでに、シロイヌナズナの花芽形成遺伝子LEAFYと相同なLgLFY、LgNDLY遺伝子およびシロイヌナズナ花器官形成遺伝子AGAMOUSの相同遺伝子を単離し、これらの遺伝子の発現部位と発現の季節変化を調べた。LgLFY、LgNDLY遺伝子はどちらも翌年に花となる芽で発現が高いが、LgLFYの発現は花芽が形成されると考えられる5月から増加し9月に減少するのに対して、LgNDLYはそのような季節変動はみとめられないことがわかった。LgLFYの発現時期がLgAGの発現時期より前であることから、LgLFYがグイマツの花成決定に関与すると考えられた。そこで、野外に生育する3種のグイマツクローン(V544、樺岡455、樺岡484)から毎月下旬に採取した1年生枝のLgLFYの発現量と翌年の開花数を調査し、2004年から2007年までの3年間におけるLgLFYの発現量と翌年の開花数との関係を調べた。その結果、V544では5月下旬、樺岡455では6月下旬、樺岡484では5月下旬と6月下旬のLgLFY発現量と雄花数とにR^2が0.48以上の高い相関がみとめられた。以上の結果から、グイマツの雄花の決定に5月または6月のLgLFY発現量が重要であることが明らかとなった。
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