研究概要 |
非常に活性の高いミトコンドリアを単離することができるホウレンソウを用いて、呼吸系の低リン酸環境への応答を解析した。3段階のリン酸濃度条件(LP, MP, HP)で約2ヶ月間、水耕栽培したホウレンソウ(品種トライ)の地上部(葉)と地下部(根)をサンプリングし、ミトコンドリアを単離した。液相型の酸素電極を用いて、cytochrome c oxidase(COX)の最大活性、NADHとコハク酸を基質としてcytochrome経路の最大活性、ATP合成と共役しない経路であるalternative oxidase(AOX)の最大活性をピルビン酸と還元剤存在下で測定した。低リン酸濃度条件のLPの葉の単離ミトコンドリアでは、COXの最大活性とシトクロム経路の最大活性が他の条件よりも低く、AOXの最大活性は高かった。一方、LPの根の単離ミトコンドリアでは、そのような傾向はなく、他の条件と同じような活性値であった。つまり、地上部と地下部のATP合成と共役する経路としない経路の低リン酸環境に対する応答が異なっていた。Western blotting法で、COXやAOXだけでなく、H^+を輸送するuncoupling proteinのタンパク量を調べている。また、酸素電極を用いてintactの葉と根の呼吸速度も測定した。その結果、AOXの最大活性の指標であるシアン耐性呼吸速度はLPの葉でかなり高い値を示し、呼吸速度と同等の値を示した。一方、LPの根ではそのような傾向はなかった。
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