ATP合成酵素のεサブユニットによる活性調節が正常に働かないシアノバクテリアの増殖能 εサブユニットのC末端側α-ヘリックスを削除したATP合成酵素を含む形質転換シアノバクテリアを用い、それの増殖能を野生株と比較した。その結果、形質転換株では明らかに増殖能が野生型にくらべ低下することがわかった。このことから、ATP合成酵素の調節機構が光合成機能調節全体に影響していることがわかった。現在、様々な光条件下における増殖能も調べている。さらに、この変異εサブユニットを含むATP合成酵素のATP合成およびATP加水分解活性を形質転換株より調製したチラコイド膜を用い測定した。その結果、この変異εは、本来の機能であるATP加水分解活性阻害能が低下していることがわかった。現在、ATP合成活性にたいする影響も測定している。 キメラεによるATP合成酵素の活性制御 好熱菌F_1のεサブユニットはATPが結合するとC末端ヘリックス部分の構造が大きく変化することが知られている。そこで、シアノバクテリアF_1のεのC末端ヘリヅクス部分を好熱性細菌PS3由来に改変したキメラεサブユニットを作成し、本来の活性制御を失った場合、F_1およびF_0F_1の活性がどのように変わるかを調べることで、葉緑体型εサブユニットの活性調節の理解につなげる。19年度は、εのC末端ヘリックス部分を好熱性細菌PS3および大腸菌由来に改変したεサブユニットの発現系および精製法を確立した。現在、上記のキメラεサブユニットを用い、F_1のATP加水分解活性に対する影響を調べている。
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