先の研究で新規の青色光受容体AppAを紅色光合成細菌から単離している。この受容体は転写因子PpsRと光依存的に直接相互作用することがわかっている。昨年度までにこの光受容体が自己リン酸化することを明らかにした。本年度はこの自己リン酸化反応炉生体内でどのような生理的意義を持つのかを明らかにすることを目的とした。 昨年度までに、AppAの自己リン酸化サイトはT30であることを明らかにした。T30の自己リン酸化がPpsRとの相互作用にどのような影響を及ぼすのかをゲルシフトアッセイ法で調べたところ、T30のリン酸化はPpsRとの複合体形成には影響を及ぼさないことがわかった。このことからPpsRを介さない新規の光シグナル伝達経路が考えられた。 そこでAppAとリン酸化反応を介して相互作用しうるいくつかの制御系を調べた。その結果AppAは二成分制御系PrrA/Bのシステムとリン酸化反応を介して相互作用していることがわかった。具体的には、AppAのフラビン結合ドメインBLUFはリン酸化されたレスポンスレギュレータPrrAを脱リン酸化する活性を有していることがわかった。T30はその際の活性中心を形成していると考えられた。実際T30AはPrrAの脱リン酸化活性を有しないこともわかった。 AppAのリン酸化を介した光シグナル伝達の重要性を調べる目的で、T30A変異をゲノムに持つノックイン株を作成し、その表現型を調べた。その結果、その変異殊では光合成遺伝子の転写が恒常的に上昇していることがわかった。おそらくAppAは光依存的にPrrAの脱リン酸化を介して光合成遺伝子の転写を調節していると考えられた。 二成分制御系はバクテリアに普遍的に存在する環境応答システムであるが、光受容体のシステムとの(リン酸化を介した)クロストークが直接示されたことはなかった。この点で今回の光受容体と2成分制御系との相互作用の発見は重要なものである。
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