本研究のターゲットであるシロイヌナズナのAtMEKK1は病原菌の感染や傷害、低温、乾燥、塩などさまさまな環境ストレスに応答して活性化し、その下流因子をリン酸化により活性化し情報伝達すると考えられており、外界環境情報伝達のキーエンザイムである。しかしながらこれら様々な刺激がどのようにAtMEKK1に伝達されるかについては、これまでのところその受容体や情報伝達因子の同定などの知見は限られており、特に直接の上流因子についてはこれまでのところ全く報告がない。そこでまず様々なストレス処理したシロイヌナズナ芽生えから内在性のAtMEKK1を免疫沈降により精製し、その活性を測定した結果、低温や塩処理により一過的に活性化することが明らかになった。さらにAtMEKK1の下流MABKKに対する基質特異性を検証した結果、各種ストレス処理によりその特異性を変化させ、下流MABKKを選択していることを示唆するデータを得た(学会発表、論文投稿準備中)。AtMEKK1の活性化が観察された低温や塩処理などについてAtMEKK1の活性化を引き起こす上流因子を同定するため、カルシウムイオンの流入を阻害する薬剤やG-タンパク質の阻害剤などの効果を検証した。その結果AtMEKK1の上流にカルシウムイオンに依存した経路が存在することを示唆する結果が得られ、現在詳細に解析中である。これらの結果により本研究の目的であったAtMEKK1情報伝達上流因子の同定につながることが期待される。
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