研究概要 |
活性酸素種(ROS: Reactive Oxygen Species)は反応性が高いために,細胞に甚大な傷害を与える.そのため,細胞には様々なROS消去機構がある.その一方で,積極的にROSを生成し,生体防御応答・形態形成において,シグナル伝達物質として利用している.シロイヌナズナには,これを生成する酵素としてAtrboh (Arabidopsis thaliana respiratory burst oxidase homolog)がある.Atrbohの活性化機構を解明することによって,毒性の高いROSを生物がどの様に有効利用しているかを明らかにすることができる.本年度は下記の点について明らかにした. 1.AtrbohDのN末端にあるputative EF-handモチーフのCa^<2+>結合定数,及びCa^<2+>結合の伴う構造変化とROS生成量の相関について. EF-handモチーフを含むポリペプチドにはCa^<2+>が結合すること,その結合定数(pCa_<50>)は4.0±0.03であること,さらに,Ca^<2+>結合に伴うEF-hand領域の構造変化がAtrbohDのROS生成活性には重要であることを示唆した.(Ogasawara and Kaya, et al.,J.Biol.Chem, 2008) 2.AtrbohDの分子内相互作用について. AtrbohDのN末端,C末端に蛍光タグ蛋白質を融合させ,BiFC法,FRET法によりCa^<2+>依存的な相互作用について検討をおこなった.これまでのところ,両者の相互作用は検出できていない.NOX5とは異なり,分子内相互作用がおこっていない可能性が考えられた. 3.AtrbohC/RHD2のROS生成活性について. AtrbohC/RHD2のROS生成活性について異種発現系を用いた解析をおこない,Ca^<2+>により活性化されること,さらにCa^<2+>とリン酸化により相乗的に活性化されることを明らかにした.(Takeda et al.,Science, 2008)
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