研究概要 |
活性酸素種(ROS : Reactive Oxygen Species)は, シグナル伝達物質として, 生体防御応答・形態形成において機能する重要な物質である. 本研究では, このROSを生成する酵素シロイヌナズナAtrbohの活性制御機構に関する研究をおこなった. AtrbohD, Fは, 生体防御に関わる酵素であり, 活性制御機構が明らかになれば, 将来的には病害に強い作物の作出に繋がると考えている. 本年度は, 下記の点について明らかにした. 1) AtrbohD, Fの分子内相互作用について, 酵母Two hybrid法により検証した. その結果, AtrbohFではN末端領域とC末端領域, N末端領域同士が相互作用することを明らかにした. これらの結果は, AtrbohFの活性制御領域であるN末端と触媒領域であるC末端とが相互作用することにより活性化することを示唆するものである. また, N末端領域を介して二量体で機能することも示唆している. 2) AtrbohDとAtrbohFの活性制御機構の比較を, HEK293T細胞を用いた異種発現系により解析した. AtrbohD, FともにCa^<2+>とリン酸化により活性化され, 両者によって相乗的に活性化されることを明らかにした. 両者の活性化制御機構は同じであった. しかし, AtrbohFの活性は, AtrbohDの活性よりも低い. この結果は, 生体防御応答時に生成される大部分のROSは, AtrbohDに由来することを示している. 3) AtrbohDの活性制御におけるRac(small GTPase)の役割について, HEK293T細胞を用いた異種発現系における共発現解析をおこなった. これまでのところ, AtrbohDの活性におけるRacの寄与は観察できていない. 原因として, 技術的な問題があること. が分かりつつある. 実験条件の最適化, 細胞株を変更することでこれらの問題が解決すると考えている.
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